大変遅ればせながら『韓流ドラマ』に嵌ってしまいました!VOL.3 『My Dear Mister』
そして、I君が2番目に観るように!と教えてくれたのが
『My Dear Mister』~私のおじさん~
このドラマについていったいどんな書き方をしたら良いものか、正直困っています。
というのも、ドラマの出来が素晴らしすぎるため、私の文章で伝えきれるかどうか、そして書きたいことも死ぬほどある為、頭の中が纏まらないのです。
どこがどう素晴らしいのかを簡潔に伝えたいのですが、最早それは無理だと書き始めて気付きました。
ただ一つ言えることは、
私は今までにこんな素晴らしいドラマを観たことがない!
ということです。
私は自他ともに認めるドラマ好きであります。未だに新しいクールが始まるとその大半を録画し、1話目だけは殆ど全部見ます。そして最終的に4つくらいに自然と絞られ、一度観始めたドラマは必ず最後まで観ます。そんなことをもう何十年とやっています。いい年のオジサンがと思われるでしょうが、好きなのだから仕方ありません。
そういうペースで観てきましたから、今までに恐らく何百本と観て来た筈です。その私がそう思うのですから、恐らくこれは大変なドラマなのです。
このドラマを観終わって4カ月ほど経ちますが、このドラマは私の心の中にそれからずっと住み続けているのです。
細かいシーンは忘れてはいるのですが、様々なシーンが頭の中にちょっと長めのフラッシュのように浮かび、その度に心が温かくなります。
もう一度見て、細かいところまで再確認して自分の心の内を詳らかにしたら良いのですが、もう少し経たないと何故だか見てはいけない気がしてしまうのです。
どうしてそう思ってしまうのかと自分に問いかけてみると、これもまた曖昧な気持ちなのですが、「初恋を想い出のままにしたい」そんな気持ちに似ているかも知れません。
もしかしたら、もう一度観てしまったら「もう暫くほかのドラマを観ても仕方がない」そう思ってしまいそうで、ドラマファンの私としてはちょっとそれが怖いのかも知れません。
兎に角、頭の中に浮かぶシーンの数が多すぎて、いったいどのシーンに感動してそれがなぜなのかなどと言えなくなってしまってはいるのです。
ドラマ全編全シーンが積み重ねられ、それはどこがどう傑出しているのではなく、(いやどこもかしこも傑出しているのかも知れませんが)一つの塊となり私の心の中に住み着いてしまったのです。
これは韓流ドラマに往々にして言えることなのですが、第5話くらいまでは
「面白いは面白いけど、I君がなぜそこまで良い言うのか分からない。」
それが本音でした。
しかし、確か6話に入った頃にはすっかり物語に取り込まれていて、物語の住人になってしまっていました。
こんな経験は、大人になってからは初めてです。
こどもの頃は、アニメの『鉄人28号』や実写の『悪魔くん』などの番組に没頭し、その中に入り込んでいたかもしれませんが、大人になってからはどんなに面白くてもどこか第三者の目でみていて、「ここか面白い!」と思うことを割と明確に言えたのですが、『My Dear Mister』ばかりは、心がドラマ内に入ってしまったので、そんな簡単には言えなくなってしまったのです。
それはまるで自分の事は自分が一番分からない的な感じかも知れません。
舞台はやはりソウル。
ソウルには色々な顔があり、勿論大都会のオフィス街からお金持ちの集まる漢江が望めるタワーマンションエリアまで様々です。しかし主人公が住んでいるエリアは昔からずっと貧しい人たちの集まる後渓(フゲ)エリアで、そこで生まれ育った3人の男兄弟の家庭とIU演じる派遣社員のイ・ジアンを中心に話は進んで行きます。
その3人の男兄弟はそれぞれ皆高学歴なのですが、長男はサンフンは怠け者で博打うち、3男のギフンは第一作で天才と言われつつもあとが全く作れない名ばかりの映画監督、その中に在ってイ・ソンギュン演じる主人公の次男ドンフンだけが一流建築会社の建築検査部の部長で、彼は地元の星でもあります。
彼は会社でもその実直な表裏のない性格で多少皆から煙たがられてはいますが部下からの信頼は厚く実力を備えた部長なのですが、世渡り下手で筋の通らない事ばかりの会社勤めに生き苦しさを感じていました。
しかしこれも韓流では当たり前の、会社での勢力争いの渦中に本人の意思とは関係なくドンフンは巻き込まれて行きます。その原因となるのは彼の大学の後輩が、若くして社長の地位についてしまったことに端を発します。こいつがまた性格が悪いのです。彼も貧しい家系からの成り上がりですので、ありとあらゆる汚い手を使って社長の地位まで昇りつめたのです。しかも彼はドンフンの奥さんと大学の同級生であり、奥さんの不倫相手でもあるのです。
そんな彼にも生まれ育った環境による悲しい部分が見え隠れするのですが、、、
そんな中ドンフンの会社の部署に一人の若い契約社員の女性、イ・ジアンが登場します。彼女はドンフンとの面接時、履歴書の得意な事の欄に「かけっこ」と書いたことからドンフンが面白いと思い採用したのでした。彼女は中卒でありながらも割とスムーズに仕事をこなす割と優秀なワーカーなのですが、何せ態度の悪い子でした。
人に媚びる事を一切せず、派遣に対して上から目線の正社員たちにはかなり評判の悪い派遣社員であります。
そんな彼女には壮絶な家庭環境と過去がありました。両親が作った借金を高利貸しに返さねばならず、アフター5以降もアルバイトをしているのにその大半を借金で奪われて行くそんな暮らしを送っています。
彼女は唯一の肉親であるおばあさんと坂の上の貧民街にある小さな借家に二人きりで暮らしています。そのおばあさんは耳が不自由でしかも寝たきりです。寒いソウルなのですがそれこそ電気も止められた暖房もなく暗いワンルームで二人はギリギリ生きているのです。
もし彼女にあばあさんがいなければ、生きて行く意味はなくなってしまっていたかもわかりませんが、大切なおばあさんの面倒を見るためだけに、ただただ借金を返すためだけに生きていたのです。
そんな状態ですので、おばあさんを守る為には何だってします。良いも悪いもありません。お金になることならおよそ何だってするのです。
初めはお金の為に、社内抗争で社長側からお金をせしめ、ドンフンを貶める画策に加わって彼の一部始終を携帯の盗聴によって知って行きます。
ジアンはその盗聴を繰り返す毎日の中で、自分が今までに出会ったことのない、信じれれないくらい純粋な大人がいるという事を知って行くことになります。
初めは、そんなドンフンを偽善者若しくは馬鹿と位置付け、彼の発言や行動を鼻で笑っていたのですが、来る日も来る日もそのお人よし振りは全く変わることなく、ジアンの耳に届きます。
勿論ドンフンは彼女の盗聴の事など知る由もなく、たまたまドンフンと同じ駅後渓(フゲ)から通うジアンの境遇を知ることとなります。
彼はジアンの境遇と彼女のいじらしい程の健気さを目の当たりにし、彼女に心から同情し何かにつけては彼女を助けるようになります。
一方ジアンは会社では彼の部署の派遣社員という立場で彼を監視し、社外では彼を盗聴する毎日の中、帰りの電車で会話を交わすようになります。そしてドンフンは今までジアンが人から受けたことのないアドバイスや優しさ受けることになります。
そんな毎日を送って行くうちに、ジアンはターゲットであったドンフンに知らず知らずのうちに惹かれて行くのです。年齢や境遇は全く違うドンフンに。
踏切・ジョンヒの店・スーパーのカート・月の見える丘・階段・焼肉屋・角にあるドンフンの先輩の店、ドンフンの乱闘、電話ボックス・葬式と名シーンの数々をご紹介したいのですが、物語を追うのはこの辺にしておきます。
この物語素晴らしさの1つは、人間愛を様々な角度から様々な人物設定と関係性を丹念に描いていったところにあります。
母子家庭であるドンフンの3兄弟の家庭。その街の人々や友人たちの温かさ。それぞれに人生がありそれぞれに価値観があり、皆家族の様に仲良く、喧嘩もし、飲んで語って一日を終えて行きます。そこには少し面倒くさいとも思われる遠慮のない心への踏み込みや、意見もあります。
後渓の街にある裏も表もない裸の人間同士の付き合いは面倒でもありその分本質的でもあり、物語はそれを涙あり笑いありでそっと温かく描かれているのです。
どんな人間がいてもいい。どんな考えがあってもいい。それぞれがそれぞれを認め合い喧嘩をし、分かり合う。そんな仲間や家族がいたらどんなに救われるでしょう。
人を蹴落として勝ち進むのが当たり前の高学歴高収入の人たちには決してないこの優しさ。
お金はないけど決して不幸せではない人たち。
韓国社会が抱える生まれながらに決められた階級社会がもたらす格差の問題、そのことをベースのした会社での生き残り競争、人の痛みを見て見ぬふりをする生まれながらのエリートたち。
そんな現代韓国の抱える鬱屈に寄り添い、一つの解決方法を素晴らしい脚本と役者の素晴らしい演技を持って提示した作品でもあります。
日本人の私としては、韓国の抱える歴史的階級差別及び格差については実質的には深くは理解し得ないのだとは思いますが、作品の素晴らしさから想像することは出来たと思います。
また何より、日本人が忘れてしまった人情や優しさ純粋さをここまで臆面もなく、全く不自然ではなく表現出来ることに対する驚きと感動があったのです。
この物語のキーパーソンは、ドンフンの同級生で一番優秀だった親友ギョムドクだと私は思っています。ドンフンよりも優秀な学年一の秀才が、僧侶の道を選んだことにこの物語の肝があります。
彼は僧侶の道を選んだことで、一人の女性(ジョンヒ)を傷つけ置き去りにしてしまいます。その女性は彼の事を忘れられぬまま、長い時間を彼が帰ってくることを夢みて皆の集まる飲み屋をやって暮らしているのです。
人間誰しもが持つ「欲」、その欲からの解放。欲を手放すことで失うモノ、得られるコト。極端な形でそれを提示することで、物凄くバランスの取れた物語に仕立て上って行ったのだと思います。
驕り・高ぶり・差別・やっかみ・恨み・仕返し・物欲・征服欲、それは上流社会や下層社会何れにも存在し、そのことがもたらす醜さ・貧しさから解放されたところで人生の真意を見付けたいと思う存在。
ギョムドクの生き方を提示することは、取りも直さず韓国の抱える階級社会問題に対する一つの答えの様な気がしました。
しかしながら、この答えは如何にも極端であり、ある意味現実性にかけているとも思います。
現実社会に生き、「欲」も持ちながら精神的醜さ貧しさに取り込まれることなく、絶妙のバランスで生きているのが、おじさんドンフンなのであります。
そりゃー何もかも信じられなくなった若い女の子だって惚れて当たり前です。
その後知ることになりますが、ドンフンを演じるイ・ソンギュンは元来オラオラ系の役が多い人であります。この役者にドンフンをキャスティングしたセンスも本当に素晴らしいと思いました。勿論イ・ジアンを演じたIUもアイドルという事ですが演技が物凄く上手く可愛かったです。そしてその演技力故に、回が進むごとにドンドン可愛く見えてきます。
やはりイマイチ纏まらない文章で申し訳ありません。
兎に角、出ている役者さんはみんな本当に素敵でした!そして素晴らしい演出と脚本でありました。
私にとって最高に幸運なことは『My Dear Mister』という作品に出会えたことであり、そしてある意味不幸なことは、これを超えるモノに今後出会えるかどうか分からいという、ドラマという存在自体に対する少し喪失感ともいえる感情が残ったことかも知れません。
皆さん、こんな文章で申し訳ありませんが、宜しければ『My Dear Mister』をご覧になってください。
沢山泣くことになりますが、流した涙は間違いなく皆さんの心を洗ってくれる筈です。
今でも頭の中にドンフンの良い声で
「イ・ジアンシー」
と彼女を呼ぶ声がこだましています。
~つづく~
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