ひと休憩~少しオーディオの話~ 第8話『Bowers and Wilkins 707S2』VOL.1

6月頭に、例の特別特定給付金が振り込まれました。

偶然にも昨年末にマイナンバーカードを取得しておりましたので、少し面倒はありましたが早々に申請は済んでおりました。

私も商売人の端くれです。この10万円は当初から使いきることに決めておりました。
経済を回すために配られたお金ですので、私自身の商売は大変苦しい折ですが使わなくては始まりません。皆さんも状況が許せば、給付金ドンドン使いましょう!経済回復の初めの一歩になれば良いのですけど、、、

コロナ状況下、皆さんと同じように私もここ3カ月仕事以外の外出も全くしませんでしたし、平常化を迎えても高齢の両親と同居する身としましては、おいそれとは不要不急の外出は出来ません。
商売を含め全く持ってストレスフルな時間でありました。緊急事態宣言は解かれてもこれはまだまだ続きがあるお話ですが。

家族に高齢者や体の弱い方がいらっしゃらなければ、ある程度はお出掛けをしてリアルを味わうことはとても大事なことだと思いますし、経済を回していくためにもこの状況に対応していかなくてはなりません。

人と触れ合い、街を感じてその空気感の中でしか得られないものは沢山あります。

街で出会ったオシャレな人、お気に入りのカフェ、レストラン、本屋さんの匂い、そこに行けば必ず欲しいものに出会える洋服屋さん、生で聴くライブ、生で観る素敵なアート、目に留まった心惹かれるモノの触感、街の匂い、音、色合い、季節の移り替わり、眩しい光、雨の匂い。

こんなこと一つ一つすべてが人間の五感に訴えかけてくれ、それを各々が感じる中で人間らしい楽しみが育っていくのだとも思っています。

ECショップをやっている人間が言うのも何ですが、そういったリアルな日常を楽しむ為のショップがArtistsanですので、これは致し方ありません。

そうした中、コロナのお籠り生活が気付かせてくれたことも少なからずありますよね。

家族について、仕事について、会社に属していらっしゃる方は会社について、友人について、大切なものについて、幸せということについて、将来について、そして自分について。

テレビドラマの再放送が目白押しの中、過去を振り返るにも良い時間だったかも知れません。
そして、見逃していた映画を観たり、ずっと聴いていなかったレコードを聴いたり、読もう読もうと思っていた本を読んでみたりしたかもしれません。

商売をやっていて「それどころじゃないよ!」という方もいらっしゃったと思います。

皆さん各々、自分にとって大切なものは何なんだろうとじっくり考えることが出来たのではないかと思います。

「あれっ?この感じは、、、、、」

私の中で味わったことのある感じである事に気付きました。
勿論、コロナがパンデミックを起こすことなど想像もしていませんでしたし、世界がこんな危機に陥るなんて思ってもいませんでしたが、じっくりと考えてみる時間を持ったこの感覚は、私が前職を退職するに至った経緯ととても似ている気がします。

自分にとって大切なものとは何か!?

私にとってはその答えが、今のArtistsanであったのです。

「本当に良いと思うモノを、一人でも多くの人に伝えたい!」

ファッションであれば、いつの日も飽きの来ない手にして本当に良かったと思えるモノ。
アートやミュージックは私が心から「イイナー!」と思えるモノや人。

そんなことを扱う仕事をしたいと思った自分の心の経緯に現在の状況がとても似ている気がしています。

前置きが長くなりましたが、私がこの時期、この状況下で無理してでも買おうと思いましたのは、Artistsanを立ち上げるに至った経緯で外せないオーディオスピーカーであります。

これからまた10年、心の栄養になってくれるものは何かとずっと考え悩みましたが、その結果はやはりオーディオでした。
こんな時期ですので、無駄使いはしたくありません。
それでも心を豊かにしてくれるずっと使えるモノ、ずっと楽しませてくれるものであれば相応しいのではないかと。

(これは手前味噌ですが、Artistsanで扱わさせて頂いている人やモノは皆そう言った理念に基づいています。)

8年前に大げさに言えば「音楽に再会させてくれたスピーカー」がありました。
(これは、アーカイブをご覧になって頂ければ詳しく書かせて頂いておりますので是非)

そのスピーカーはイギリスのBowers & WilkinsというメーカーのCM1という所謂ブックシェルの小さなスピーカーであります。

私はそのスピーカーと出合って、「自分の好き」に再会出来たのです。

そこから8年、CM1に良い音を出させるためにありとあらゆることを実験してきました。
何度もスピーカーケーブルを変え、プリメインアンプを買い足し、SACDプレーヤーを買い、スピーカースタンドを2個替えてやっと今のシステムに落ち着いたのは4年ほど前です。

CM1というある種恩人の様なスピーカーのポテンシャルを経済状況の許す範囲の最大限で引き出してきたつもりです。
そして実際CM1はそれに答えてくれ、私の心の拠り所の大きな一つになっていてくれました。

新しい商売を立ち上げ、全く上手くいかない日々が続き眠れない夜も多くありました。
そんな時も、バーボンとCM1から流れる音や音楽が立ち上がる力をくれました。

私にとって、音や音楽はそれほど重要なモノなのです。

そんな日々の中で、昨年末何年かぶりで新宿ビックロのオーディオコーナーに行く機会がありました。
馴染みのD&Mの販売員さんのMさんがいるかなーと思いながら訪ねたのですが、果たしてMさんは笑顔で迎えてくれました。

彼は開口一番
「凄いスピーカーが出来ちゃいました!」
そう言うので
「えっ、またすごい高いやつでしょ!?」
そう聞き返すとMさんは
「それがそうじゃないんですよ、これ707S2、、、、これ凄すぎます!まー聴いてください!」
そう言って、20年くらい前のポリスのアルバムを聴かせてくれました。
これが本当に凄かったのです!

7070S2といえば、私の愛用してきたCM1の2代後になる後継機じゃないですか!
仕事に没頭していたため、最近のオーディオ事情は全く知りませんでしたので、707S2
の音を聴いたときの衝撃は凄いものがありました。

音の分離感、高音のクリアーさ、適度な低音の豊かさ、そして何よりも音楽全体の奥行、どれも2ランク3ランク上の音なのです。
同じ大きさのエンクロイジャー(スピーカーボディー)から出て来る音とは思えないほどの進化です。

いやー、凄いモノを聞かせて貰った!当時私はそんな風に自分とは少し関係のないことの様に思っていました。
私の高校時代からの親友でありオーディオ仲間であるI君にそのことを伝える、そんな程度でした。

2020年オリンピックイヤーの年が明け2月に入ると突如新型コロナウィールスなる疫病が世界中で猛威を振るい始め、初めは「アウトブレイクになるの?」なんて言う感じからまさかのパンデミック。
3月には世界中でロックダウン、「日本はどうなる!?」なんて言っている間に志村けんさんがコロナで亡くなられたというショッキングな出来事が、日本にも緊張感を持たせ、4/1に緊急事態宣言なる何とも曖昧な宣言が出されることとなりました。

緊急事態宣言が出される前から、展示会等の自粛、店舗営業の自粛、宣言後に通勤の自粛、経済は完全にストップしてわがArtistsanもECでありながら、考えられない打撃をこうむりました。
その間身動きが取れなく将来不安が増して行くだけの日々が続き、先に書きました状況が訪れる中、経済的救済手段の一つとして特別特定給付金が全国民に配られることとなり、今回の給付となりました。

何もできないで不安に押しつぶされそうな中、経済効果を狙って何とも驚くような措置が取られることになりましたので、3月から奥さんの両親との同居が始まっていた事でいつものリズムが大きく変わる中、頭に707S2の事がフッと頭に浮かんできたのです。

状況を考えますと何だか申し訳ない気もするのですが、文頭でも申しました通り全額使うのであればこれしかない!そう思ってあれこれ調べておりました。

すると、イギリスの名門メーカーでありますが、made in Chinaである事も影響してだとは思いますが、EC市場になくなってしまっているのです。あっても、設定上代をはるかに上回ったものしかありません。

「やはり無理かー」と思っていたところ、それでも何気なくwebで探していると、サウンドエースさんという伊勢にある専門店さんが在庫をかなりプライスダウンしているじゃないですか!?ちょっと足せば買える値段です。

ビックロのMさんには申し訳ないですが、在庫の問題とあまりの上代の違いに、そこで買うことにしました。
買う前にメールで質問などをしてみましたが、とても感じが良く即決した次第です。

6月7日、無事に「707S2ピアノブラック」は我が家に到着しました。


~つづく~















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