ひと休憩~少しオーディオの話~第9話『Bowers and Wilkins 707S2』VOL.2

初めての所での買い物ですので、少しドキドキ感はあったものの707S2は無事到着しました。
いつも思うのですが、Artistsanで初めてお買い物をして頂けるお客様もこの様なお気持ちなのだろうと思います。安いものを売っているわけではないので、それでもお買い上げ頂けることは大変有難いことだと改めて感謝しております。

早速梱包を解き、中に発砲スチロールで厳重に守られたスピーカーとそっと取り出して、一つ一つにも被せてある梱包材を取ると、中からピアノブラックに光ったスピーカーが顔を出しました。
「オー!!!」

重さは一つ6kgと結構な重さなのです。
私の持っている先々代のCM1は6.7㎏ありましたのでそれでも少し軽くなっているようです。

これを今までCM1を乗せていたTAOC WST C-60HBというB&Wのこのシリーズ専用のスピーカースタンドにねじ止めする作業からスタートしました。
日本は地震国家なので地震で落ちたりすることのないこともこのスタンドを選んだ理由でもあります。
そして元来CM1用に設計された音抜けがなかなか良いスタンドなのです。
CM1は予め外して以前から使用しているテレビボードの上に置くことにしました。

同じスタンドを買って並べようかとも思ったのですが、スタンドもなかなかな値段なのと、見た目に圧迫感があるとの事で奥さんより却下されて代案として出てきたのが、オンボードの案でした。
自分では考えていなかったこれまたなかなか素敵な案です。

ボードは一枚板の高級品ではないこともあり、CM1に黒御影石を2枚とのその底に防振材を用意して、置き場を作りました。そしてインシュレーターには以前使っていた黒檀のモノが良かったのですが、それは友人にあげてしまったため今はありませんので、予算的に許す長い事評判の良いオーディオテクニカのハイブリッドインシュレーターを使用することにしました。

オーディオの世界はある種振動との戦いですので、これは欠かせない作業です。恩人たるCM1にみすぼらしい置き場を用意するわけにはいきません。
そして、先に書きました黒御影石ですが、これは一般的には敷石に使うものです。
オーディオの世界はオカルト的ですので、「オーディオ用」と名が付いた瞬間に同じものが5倍にも10倍にもなります。
そんなバカバカしいことに巻き込まれるほど予算に余裕はありませんので、13mmの厚さの敷石用で代用です。しかしこれで十分だと思います。


そして、Bower&Wilkinsというメーカーはスピーカーがバイアンプ若しくはバイワイヤリング用に設定されており、後ろのケーブル端子が+2つ-2つと計4つあります。
この4つ全て使うのがバイアンプ若しくはバイワイヤリングという繋ぎ方になります。
(バイアンプとは2つのアンプを使う方法で、バイワイヤリングは一つのアンプを使う方法です。高音用と低音用で入力出力を分けるのです。)

メーカーからは真鍮のジャンパー(上と下の+同士ー同士を繋いで2つの端子でも使えるようにしてある伝導体)が付いているのですが、これは音質的に問題がある為、市販のものを用意してありました。

707S2から真鍮のジャンパーを外し、新しいジャンパーケーブルを取り付けます。
この作業を二つ分。

艶消しの黒のスピーカースタンドの上にピアノブラックの707S2がセットされました。
そして、CM1は黒御影の上に真鍮色のインシュレーターを携えた姿で割と立派に見えます。

ボードの上には元々アンプが置いてあったのですがこれを棚の中に納めるしかなくなり、いざ納めてみると御影石の高さが邪魔になり入りません。



これではアンプの振動対策が拙いことになります。そこで、持ち合わせていたNASPEC(現在販売終了)の薄めのインシュレーターをアンプの下に敷きました。これでひとまずは大丈夫だと思います・


ポジションを詰めて最終的にスピーカーケーブルを繋いで、一応セッティング完成です。

記念すべき1枚目は、最近本当に素晴らしい録音で驚いたmqa-cd×uhqcdという録音形式と録音ソフトで収録されたBill Evans Trioの『WALTZ FOR DEBBY』に決めていました。

CDをセットし、音出しです。

一曲目の『MY FOOLISH HEART』が静かに始まりました。
ピアノの高音が凄く綺麗です。ワイヤーブラシの音も小気味良い響きです。
しかし、低音が今一つ出てきません。私は低音のボア付きが好きではありませんし過多な低音も好みませんが、低音がかなり小さめです。それに伴って中域も腰高です。
ビックロで聴いた音とは違います。アンプも環境も我が家の方が良い筈です。

アルバムを最後まで聞き終え全体に腰高な音である事は否めなかったので、これは中域をチェックするため、何度聞いたか分からない山下達郎の『For You』を聞いてみることにしました。
「七つの~海から~♬」

達郎の声がやはり腰高です。

やはり一発目はこんなもんです。
これからエージングが始まります。エージングとは、車で言う慣らし運転の様なもので、ウーハーの張りが馴染んできたり、通電が馴染んできたり、聴く方の耳が馴染んでくるのに時間が必要で通常3カ月くらいはかかります。

これからが、オーディオ馬鹿のお楽しみの時間です。
ありとあらゆる持ち合わせのCDをかけまくり、スピーカーのベストポジションを決め、自制的範囲内でケーブルを替えてみたりして、自分好みの音に育てて行く訳です。

因みにスピーカーケーブルというのもメーター400円くらいから上は青天井です。私の様な中級オーディオ好きはせいぜいメーター2000円くらいのものまでしか使いませんし使えません。
これが不思議なことに、ケーブル1本で音は変わります。淡白な感じになったり、低音が熱くなったり、クリアーになったり、元気な音になったり、そのオーディオセットと部屋の環境そして音楽ソフトによって良し悪しが出てきたりします。同じ電線なのですが、それで驚くほど音が変わります。これは飽くまで聴く本人の主観によるものなので、どれが良いとは言えませんが、ここがまた面白いところです。

話を戻しますと、707S2には慣らし初めであっても傑出したものがありました。やはり高音の綺麗さです。その綺麗さは、昔同メーカーの上位機種805Dを聞いたときの感じに似ていました。物凄くクリアーで綺麗なのだけれど上品で耳に刺さらない高音です。これは素晴らしい!

同じ音源をCM1にシフトして聴いてみましたが、残念ながら物凄い差がありました。

707S2の圧勝です。

それならそれで邪道かもしれませんがCM1もトーンコントロールなんかを駆使して、音を近付けてやろじゃありませんか!そんなことを考えています。

そんなこんなで時は過ぎ、今日で10日目。
早くも音に変化が出てきました。低音が出てきたのです。嫌なボア付きもありません。楽器たちの響きの余韻が実に美しく妙な残響も残しません!

特にピアのモノ、ギター物はもの凄いことになって来ました。

大好きなピアノトリオも奥行きが違います。10年付き合って貰うのに相応しいスピーカーになって来ました。まだまだエージングが足りないと思いますのでこれからが楽しみです。

まだ現代の低音重視のサウンドの締まりは今一つですので、ここから変化していくかもしれません。エージングが進んで行くとどこまで行くか期待が膨らみます。

兎に角、今家にあるCDを片っ端から聴き直してみようと思っています。
また新たな音の発見があるかも知れません。
暫くは奥さんに迷惑な日々が続きそうですが、奥さんがこのスピーカーの音を殊の外喜んでくれています。

「ボーカルの歌詞が自然と入って来る」

彼女はそんな表現をしています。何にしてもこの点は本当に良かったです。

素晴らしい音の音楽は人を幸せにしてくれます。人によるとも思いますが、初めてこの高音質の音楽を体験した方は少なからず感動すると思います。

私のサイトArtistsanでも実はこのオーディオをいつか扱っていきたいという夢があります。
現状のコロナ下ではなかなか難しいですが、リアル店舗と並行してオーディオの素晴らしさを皆さんに伝えていきたいと思っております。

生活を楽しむための一つであることは間違いありません。

オーディオの世界はオカルト的な要素も充分含んでいます。上はきりがない世界です。それこそウン百万、ウン千万のスピーカーなんて言うのもザラにあります。
何十万のスピーカーケーブルなんて言うのもザラです。挙句の果ては、電線から直接オーディオ用に電源を引いてくる方までいらっしゃいます。

それが悪いというのではありませんが、私はそんなものには興味がありませんし手も出ません。
これは、一部の大金持ちの人や常軌を逸した人のやることです。サラリーマンにマセラティーは買えませんし、オーディマピゲは買えません。
メルセデスのCクラスや、ロレックスのエアキングで充分でしょう!?
それでも庶民の夢ですし、メルセデスのあの安心の走り心地は素晴らしいと思いますし、クロノメーターの時計を持てる幸せは別格だと思います。そして何よりも計画的に頑張れば実現できる範囲のモノ。ここが重要だと思うのです。

一般のサラリーマンの方が、頑張って貯めて買える程度のモノの中で、より素晴らしいモノをご紹介しお勧めしたいと思うのです。

少しオーディオの話の確か7話でも書かせて頂きましたが、私がやりたいのは

「中級オーディオのススメ」

です。決してオカルトオーディオの世界ではありません。多くの楽しいモノの一つとしてのオーディオです。
我々1960年近辺に生まれた世代は、幸運にも現在までの音楽が出来て行く過程をほぼオンタイムで観てきました。
ビートルズの最終世代であり、ツェッペリン、ディープ・パープルなどのハードロック、デビット・ボーイ、クラプトン。イーグルス、リンダ・ロンシュタッド達のウエスト―コースト、アース、スタイリスティックスなどのソウル、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェルなどのAOR、ホイットニーを筆頭とする女性ソウルシンガー、スティング、トト、そしてピストルズなどのパンク等々、挙げたら枚挙に暇がないような音楽の変遷期と青春期をパラレルで過ごしてきた気がします。

フィフティーズやモダンジャズは一世代前の方々の音楽ですが、これもまた少し遅れて聴いたりしていました。

我々世代にとって音楽は恐らく今よりもずっと若者文化の中心であり、皆そこに何かまた別のものを観ていた時代です。
そして、当時の男子たちの欲しいモノのトップ3に、必ずステレオが入っていたとも思います。若者の3種の神器みたいな感じでしょうか?

ですので、もう音楽を聴かなくなって何年も経つけど昔好きだった音楽がもう一度聴きたいなー!なんて思っている人はかなり多くいる筈ですし、眠っているレコードはどうなっているかなー?なんていう人も多くいる筈です。

そんな人たちに、最新の技術で音楽、音の世界の素晴らしさをもう一度感じてほしいと思っているのです。
そして、もう少し若い人たちでも音楽好きはたくさんいらっしゃる筈です。
イヤホンで聞くのも良いですが、オーディオで聴く音はまた格別です。目の前で演奏してくれているような、五感に浴びせられるシャワーのような感覚を味わって頂きたいとも思います。
目の前にボーカルが居て、その左側にはドラム、右手にはピアノ、その少し中央寄りにベース。そんなことが感じられるって凄いことだと思いませんか?

録音の良いモノは、そんな音の定位もしっかりしていますし、録音されたスタジオの感じが分かるモノだってあります。

たしかに一つの趣味としては決して安いモノではないかも知れません。
入り口は先ず12・3万から20万くらいが良い気がします。もっと安いモノはまたいくらでもありますが、その後を考えると、そのくらいからがスタートかも知れません。

もしそこで満足な方がいてもそれでOKです。そして、興味が出て来て買い足して行こうという方もいらっしゃると思います。
そんな事も含めて、スピーカーを出来るだけ良いモノを買っておけば、後からまた買い足せる状態になりますので欲を言えば20万が良いラインかと思っています。

スピーカーで言えば、それこそ今回私が購入したB&W 707S2などはその筆頭です。B&Wにももう少し安い600シリーズというものがありますので、そちらでも良いかも知れません。

他にもDALI(デンマーク)、KEF(イギリス)、Wharfedale(イギリス)、QUAD(イギリス)、MONITOR AUDIO(イギリス),FOCAL(フランス)、ELAC(ドイツ)、JBL(アメリカ)、KRIPTON(日本)、FOSTEX(日本)、などこの価格帯で手に入る恐らく皆さんの知らないであろうブランドが数多くあります。

こう並べるとイギリスはスピーカーメーカーの宝庫ですね!ここには入れられませんでしたがHARBETH、TANNOYなどの伝統ある高級ブランドもイギリスですし、Bowers&Wilkinsもイギリスです。

イギリスという国が素晴らしいのは、こうした世界に誇る音の文化がこんなにも沢山存立できるという点にもあるかも知れません。
イギリス出身の役者さんやミュージシャンたちのポテンシャルが高い事とこの事はやはり同一線上にあり、感性に訴えかけるものに対する感覚そして感性の高いモノに対するリスペクトが、確実に国レベルで存在することがベースにある様に思います。
そうでなければ、経済的な事も含めて、日本より小さな国でここまでの優秀な音響メーカーが共存できるなどという事は在り得なですよね。
そういう意味では、とても素敵な国だなーと思います。

勿論、YAMAHA、ONKYO、JVC、SONY、PIONEERなどの有名国内ブランドもありますが、外国かぶれの様で何なのですが、入り口は洋物から入った方が、味付けが楽しかったりしますので良い気がしています。

これに、marantz M-CR612という万能ネットワークCDレシーバーを先ずはお勧めします。これは、CDプレーヤー、アンプ、インターネットラジオ、通常のFM、AM、そしてUSBダック、Apple AirPlayなどの機能満載のモデルです。
パワーはそんなにありませんが、バイアンプなどが使える優れものです。(一つのアンプなのにバイアンプと書きましたが、このレシーバーアンプは2つのアンプで出来ていますのでバイアンプとなります)これとスピーカーさえあれば、取り敢えずOKという代物です。

この商品は5万ちょっとぐらいですので。これとスピーカーそしてブックシェルの場合は出来れば(スピーカースタンド1万円程度)これとインシュレーター、そしてスピーカーケーブルがあれば取り敢えず完成です。

現在でもビックカメラやヨドバシカメラの大型店には必ずオーディオコーナーがあります。
そこに行ってご予算に会ったスピーカーを実際に聴いてみてください。アンプはひとまずMCR-612の一点絞りでOKです。

初めはどの音が良い音なのかさっぱり分からないと思います。しかし、色々聴いているうちにどんどん音が分かってきます。そして、販売員さんと仲良くなって色々と情報を得てください。メーカー派遣の店員さんとお店の販売員さんがいます。出来ればお店の販売員さんが望ましいです。メーカー派遣の方ですと勿論そのメーカーのモノばかり勧められますしお店の方の方がフラットな意見を教えてくれると思います。稀にメーカー派遣の方でも割とフラットな意見で教えてくださる方もいらっしゃいますので、話してみた感触で馴染みの販売員さんを作ってください。

それだけ揃えばあとはCDを買うのみです。
データのダウンロードでも良いのですが、大抵の場合MP3という圧縮音源になっていますので、容量が約10分の1になり音質が落ちます。ただ容量を食わないので、その点は便利です。
また、CDをパソコンに取り込む場合、形式はWAVで保存するとほぼ原音のままの音質で保存できますが容量はかなり使います。このときもMP3という選択肢も勿論あります。

また、ハイレゾ音源のダウンロードというのもありますが、これはやはり少し値が張ります。
パソコンにダウンロードしたものを容量大きめのUSBに入れてM-CR612にさして置けば、CDを入れ替えることなく音楽を楽しめます。また、iPhone、iPodでAirPlayが楽しめます。

兎に角近頃のオーディオは大変便利にできていたりします。高いピュアオーディオになるとドンドン不便になって行きます。それしか出来ないという感じとそれだけで突き詰めて作られているところにグッとくる人たちが多いのも事実です。

何しろ初級のモノは大変便利なものが多いのは一般的に事実です。

色々と書きましたが、兎に角

「好きな音楽を良い音で聴く」

という幸せを味わってみてください。オーディオですと複数で音楽を共有して楽しむ事も出来ますので、家族でお友達同士で同じ時間に同じ音楽と音を共有することも悪くないと思いますよ!

今後色々な意味でコロナ前に戻ることはなさそうですが、旧来のスタンダードとは別に新しい社会の在り方や個人の在り方が問われるのだと思います。
そして数年かけてニュースタンダードが築かれていくのだと思います。

その中でも、決して変わらないのは人の大切さとその人たちへの想いなのではないかと思っています。
皆が個人個人懸命に生きて行く中で、自分らしさを失わずに個人として立ちその上で各々がその人たちの個性を尊重し啓発し合える社会になって行って欲しいと心から願っております。
私のお勧めしたいと思っているモノに共通して言えることは、それを作っている作家さん、デザイナーさん、職人さん、技術者さん達の

「開発や創作に対する魂が感じられるモノ」

であるという事です。
自分たちらしいモノ作りの中で、試行錯誤を重ねあるいはそれをベースにした閃きを作り出している魂に、人は心を揺さぶられるのだと思います。

様々な大人の事情の中がある中で、

「これで良いではなくこれが良い!」

というものを作り続けることは中々に大変なことです。しかし、絶対に譲れない魂の叫びを持って「これが良い」を作り続けている方々が多くいらっしゃいます。
私の趣味のオーディオも現在の音楽市場、オーディオ市場を研究し、自分たちらしい音造りという場所に立脚して研究開発しモノ創りをしています。このことに対する敬意が購買まで導くのだと思っております。
所謂、お客様にそして自分に嘘のないモノ作りです。

Artistsanで扱わさせて頂いておりますファッション、アート、ミュージックにも勿論そう言った魂を感じてご紹介をさせて頂いております。

お客様には、そういった方々の魂の籠ったモノつくりの姿勢を一緒にお買い上げ頂けたら幸いです。そうした時に、モノは単なるモノではなくなるのではないでしょうか!?

長々と私の取り留めのないブログにお付き合い頂き有難うございます。

今後ともArtistsanをよろしくお願い致します。

















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