「私の好きなモノそして人。」~テレビドラマって観ますか?~VOL.2「家族みんなで観ていたテレビ、そしてヒーロー」
話がそれました。話を戻します。
録画などがない、一期一会的な緊張感は、否が応でも私をテレビに引き込んで行ったように思います。
「強く大きいヒーロー」
「正義の味方」
「子供の味方」
「悪いやつをやっつける」
「傷ついてもへこたれない」
「絶対に負けない」
こんなテレビ漫画のヒーローたちは、ブラウン管の中で毎日毎日代わる代わる大活躍です。
もう、私は心を鷲掴みされていました。
この様な感情や想いをしていた少年は私だけではなかった筈です。
こんな、テレビっ子は大きくなるにつれて、祖父や祖母と時代物を観るのが楽しみになって行きました。(「隠密剣士」というのももっと小さい頃に観ていましたが、今一つちゃんとは理解していなかったのだと思います。)
特に嵌っていたのが、
「花山大吉」
松方弘樹のお父さんである近衛十四郎が主役でありました。
今思うと何であんなおじさんに小さな子供がドハマりしていたのか、ちょっと笑ってしまいますが、その当時は本気で憧れていました。
強いのに猫が怖かったり、おからが好きだったりするちょっとした弱点やウィット持ったヒーローに惹かれて行きました。
ちょっとした弱点を持ったヒーローというコンセプトは現代のドラマや映画でもその人間性に寄り添える手法として、その後定着していったように思います。
ちょっとした弱点や、明確な弱点を持っていた方が、観ている者にとって応援のし甲斐があるのです。
「一人で大勢の悪い奴らをやっつける!」
当時のヒーローはたった一人で立ち向かうのです。何十人を相手に。
現代ヒーローはチームだったりしますが、やはり「一人」がカッコイイ訳です。
組織に身を置かない「素浪人」これ自体がちょっとイカシテルと子供心に感じていました。
「素浪人、、、」
カッコイイ!!!
そして、テレビではホームドラマの数々が始まりました。
「肝っ玉母さん」(京塚昌子、山口崇、山岡久乃、音羽信子)
「ありがとう」(水前寺清子、石坂浩二)
「だいこんの花」(森繁久彌、竹脇無我)
「おやじ太鼓」(進藤栄太郎、風見祥子)
石井ふく子や、平岩弓枝、向田邦子、山田太一と言ったその後の大御所さんたちが作るドラマはとても面白く、身近な人々に起こる小さな事件や、揉め事、おめでたい出来事等々を通して周辺の人に起こる心の機微を面白おかしく時にシリアスに描いて、私に教えてくれた気がします。
今考えると、コメディー番組なんかも祖母と一緒に良く見ました。
土曜の昼にやっていた、
さえない痩せた禿の髭面の親父が腹巻を巻いて舞台に登場する、舞台形式の番組でした。
「すみちゃ~ん、腹減った~!」
と言って腹巻を掴んで上下さす仕草で登場するのです。面白くて堪りませんでした。
それと、これはたしか日曜の夕方6時くらいからやっていた、
「てなもんや三度笠」という様々な役者さんや芸人さんが出てくる舞台番組です。
これは藤田まことと白木みのるの二人が主役で、役者さんや芸人さんが達は皆一人づつ持ちネタ持っていて、その持ちネタを
「今だ!」
というときに披露するのです。見ている方は、その持ちネタが、いつかいつかと楽しみに待っているのです。
仕立ては、吉本新喜劇そのものです。
財津一郎、ルーキー新一、京唄子、鳳啓介、南利明と言った個性あふれる面々があれやこれやと笑わせてくれる大好きな番組でした。
この番組も始まるときに、「あんかけの時次郎」演じる藤田まことが、
「当たり前田のクラッカー!」と歌舞伎調でスポンサー名を言って始まるのでした。
1970年、大阪万博を期に今度はカラーテレビが普及し始めます。
当時主流だったからテレビは、家具調カラーテレビというもので、本体は木彫で、欄間の様な細かい細工がブラウン管周りの施されており、まるで高価な仏壇の様でありました。
観ていないときにはブラウン管に上から布を掛けたりする家もありました。当時の日本人は、どうやら仏壇とテレビを何処か同じような価値観で見ていたのかも知れません。
観ていないときにはブラウン管に上から布を掛けたりする家もありました。当時の日本人は、どうやら仏壇とテレビを何処か同じような価値観で見ていたのかも知れません。
小松方正・コント55号・小川知子・朝丘雪路・宮本信子などの面々が、面白いことをするのがとても新鮮で、ちょっと刺激的でした。少し大人びた番組でしたので、両親はあまり見せたがっていなかったように思います。
ここで、当然出て来なくてはいけない
「8時だよ、全員集合!」
というドリフターズの伝説的番組があるのですが、私の母親が、「あんなくだらない番組は見なくてイイ!」
と言って見せてくれませんでした。何度も「見たいよ!」と訴えたのですが、全く相手にしてもらえず、願いは叶うことがありませんでした。
そのお陰で、学校では話が合わず困ったことを覚えています。
中学に入ると
「パパと呼ばないで」(石立鉄男、杉田かおる、大阪志郎)
(因みに脚本には向田邦子の名があります)
これは、本当に一世を風靡しました。石立鉄男演じるもじゃもじゃ頭の身勝手な子ども扱いの苦手な男が、次第に子供と心を通わせていくお話なのですが、まー泣けるのです。
「イカシテル、カッコイイ」の他に
「泣ける」
がドラマを観る一つの基準になって来ました。
モジャモジャ頭の石立鉄男は欠点だらけで、精米店に下宿しているどちらかというと風采が上らない男の筈なのに、何故かカッコイイのです。
皆さん少しお気付きかと思いますが、このスタイルは少し「素浪人」ぽい属さないカッコ良さがあったのだと思います。
やはり、ヒーローは一人なのです。
今度は欠点だらけの男に、とても綺麗な心があったり、ちょっとニヒルなカッコイイところがあったりする、新しいヒーロー像の誕生です!
これは、またその後の『傷だらけの天使』の萩原健一、『探偵物語』の松田優作に繫がって行くこととなります。
~つづく~
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