デザイナー・イラストレーター/荻原美里さんとの出会い

荻原美里さんの絵とは、やはり渋谷GALLERY CONCEALで出会いました。

その日は、Artistsan参加メンバーの幸田真輝子さんの合同展が行われていたため、それを観に古い渋谷の雑居ビルのうす暗い階段を4階まで登りました。時間は、夕方7時を少し回っていたかもしれません。

ギャラリーに入って直ぐ右手の入り口の真っ白なスペースで、その合同展は行われていました。そのスペースのドア1枚分の狭い入り口からは、綿菓子の様な明かりがフワッと暗い廊下に広がっています。いつものコンシールの風景です。

中に入ると、そこには幸田さんがいらっしゃって

「あっ、河野さん、こんばんは。」
そうにこやかにご挨拶して頂き

「こんばんは。久し振り!」
わたしも思わず笑顔で返しました。
「ここですね!?」
「そうです。時間がなくてこのグループだけなんですけど、、、」

久し振りに幸田さんとお会いして、作品を見せて頂きました。

その頃の幸田さんのテーマはもちろん細密画で、丹念に大胆に植物の生を描かれていました。
幸田さんの絵は基本的に細密画なのですが、それは何故だか分からないのですが幸田さんのイラストから感じられることは、それと相反してとても大胆で、植物でありながらどこかエロティックだったりします。それは「生きる」という事はそう言う事なのかもしれないなー、と思わせてくれるようなそんな感じがするのです。
今回も、当にそんな印象でした。

作品に対しての幸田さんの想いをお聞きし、私の意見なども述べさせていただきました。
因みに、Artistsanで初めて売れたのは、その時出されていた幸田さんが描く植物のイラストです。

意見交換が終わり、そのブースの他の絵を見ようと正面の壁に目を移したとその時、幾人か合同で出展なされていた他の方の1枚の絵に、私の目は釘付けになりました。

ラブラドールレトリバーと思われる犬が、飼い主と散歩している1枚の絵です。
ひたいと足元が少し白くなっている高齢のラブラドールは、リードで繋がれながらも飼い主の前を飼い主の速度に合わせながら一所懸命に歩いているのです。場所は、ニューヨークかどこかの裏路地です。

その姿からは少し寂し気な気配が漂います。

もしかするとこの絵は、飼い主が思い出す懐かしい1シーンなのかもしれません。
飼い主とラブラドールの間には、沢山の思い出があるようです。でも、一番思い出すのはルーティーンであったこの道。

水彩画で描かれたこの絵から、いくつもの物語が私の頭の中を通り過ぎて行きました。
ラブラドールは少し下を向いているので、私はラブラドール目が合ったのではないのですが、少し寂しく、懐かしく温かい想いの詰まったこの絵に魅入られてしまいました。


他にも、水彩画の違ったタッチの絵が数枚あり、どれも素敵な絵ばかりです。
この絵を描いた方は?
とこちらの店長のMさんに尋ねたところ、
「荻原さんは今日いらっしゃいません。」
と残念そうに言われたので、そこに置いてあった、「misato ogihara」と書かれた細長い名刺を持って帰ることにしました。

「何とも素敵な絵だ、、、!」


それから数日経っても、やはり気になって仕方ありません。
あのラブラドールの絵が頭に焼き付いたままなのです。

「どうしよう、、、、?」

その絵から推察するに、どう考えても私のサイトに参加して頂けるようなランクの方ではありません。多分かなりの方であることは間違いありません。

しかし、諦めきれません。

身分不相応は承知で、思い切って、名刺に書いてあった荻原美里さんのメールアドレスに、これから始める私のノンジャンルセレクトショップArtistsanの説明と思いの丈を書き連ねて送ってみることにしました。

長々と書いたメールを思い切って送信!

すると、その日中に荻原さんからリメールがあり、会って頂けることとなりました!!!

何と運が良い!

数日後、今はなき青山のFACTORYというカフェで待ち合わせをしました。
12月末の寒い日でした。

そこは、青山学院の並びで少し渋谷寄りの裏路地にある少しギャラリーの様なカフェで、雰囲気がどこかCONCEALに似ています。
路面にあるそのカフェは壁が打ちっぱなしで、テーブルや椅子もバラバラで、今っぽくもあり、少し懐かしい様でもある若い人たちが多いカフェでした。

私は、待ち合わせ時間の10分ほど前に到着しましたので、入り口近くの席に座り「どんな方だろう?どうお伝えしよう?」そんなことを考えながら、荻原さんの到着を待ちました。

Wifiがあるカフェを条件に待ち合わせ場所を探したので、ノートPCを出して、Artistsanのデモページを開いて準備をしていました。

Artistsanのサイトデザインは、私の大学時代の友人であり、ミュージシャンの木村達司君にお願いして作って貰ったものです。彼は大学時代からファッションセンスが良く、ほぼ40年前に頭をかなりツンツンにしたパンクファッションの走りの様な格好をしていました。当時は、そんな人はまー珍しく、かなり異色の人でした。
彼は、数年後dip in the poolという甲田益也子(一世を風靡したモデルさん)さんとのユニットを組んでデビューするのですが。

その彼とは全くの音信不通でしたが、ひょんなことから数年前にmixiで再会しました。(今ではSNSでmixiは殆ど聞かなくなりましたが)
丁度彼が久々に音楽活動を再開し、dip in the poolのニューアルバム「brown eyes」を出す直前の話です。(これが、音質・楽曲・幸田さんの歌声と3拍子揃った良いアルバムです)

それから、ちょくちょく会う様になってまた数年が経ちました。
すると木村君が、

「河野君の住んでるところの近所に引っ越すことになったんだよ。」

そんな連絡があり、それは奇遇だと盛り上がりました。
そうこうしているうちに、40年近く前から、打ち込み音楽に触れていた彼は、
「サイトも作れるよ!」
というので、彼のセンスを信じていた私には渡りに船です。サイトの構築を彼にお願いすることにしました。

出来上がりは流石木村君、素敵なものになったと思っています。


そんな、ちょっと自慢のテストサイトをPCで立ち上げて、画面を見ながら荻原さんの到着を待ちました。

程なく、12月の夕暮れのガラス越しに、シックな装いの女性が見えました。

荻原さんです。

初めてお会いするので、私の目印を言っておきました。
「白髪頭で、眼鏡をかけてます。」
そんな風に。

彼女はカフェに入って直ぐに私を見てそれと気づかれた様子で、

「河野さんですか?」

私は立ち上がり
「はい、河野です。荻原さんですか?」
「はい。」
「今日はありがとうございます。」

荻原さんはとても上品で綺麗な方です。どんな方か全く知りませんでしたので、なんだかすごくほっとしました。それは上品でお綺麗だったこともありますが、なんだか初対面ではない、そんな感じがしたからです。

「どうぞおかけください。」

私は、荻原さんを奥の椅子に案内し座って頂いてから、改めて自己紹介をしました。
すると荻原さんは

「何だか初めて会った気がしませんねー!」

なんとそういわれるではないですかー!!!

「僕も全く同じことを考えてました!」

そういう流れでもあって、私も割と一所懸命サイト主旨をテストサイトをお見せしながらお話させて頂き、お話は快諾して頂きました。

嬉しい限りです!!!

その後プロフィール作成等の資料を頂きましたが、荻原さんはやはり凄い方で、

新潮社「野菊の墓」伊藤佐千夫の装幀画
新宿センチュリーハイアット/レストランタイル画
インターコンチネンタル東京ベイ/壁画

などなど、素晴らしい実績を持った画家さんで、改めて驚きました。やはりタダ者ではありませんでした。

その後色々とやり取りをさせて頂きましたが、やはり一流のプロ方は違います。
期日の正確さ、連絡のレスポンスの速さなど所謂アーティストの方々が苦手とするものが一流ビジネスマンの様なのです。
あれだけの感性と技術にプラスされたそのお仕事に向かう姿勢は、本当に頭が下がります。相手のことを思いやるお気持ちを持たれた、素敵な方であります。

先ごろ、Artistsanで初めて荻原さんの原画を扱わせて頂きました。
一つは「Balthzar」という題名のニューヨークのフランス料理のレストランの絵です。
それまで、ジクレーを中心にはんばいさせて頂いてきた中で、原画となるとやはり高価なので心配をしておりましたが、私の古巣の会社の同僚で元デザイナーのO氏がArtistsanでこの絵を見かけ、とても気に入ったので直接見たいと言ってくれたので、我が家に来てもらい実際に見て貰いました。
するとO氏は、眼鏡を額に上げてじっくりと作品を見ながら小さな声で

「思った通りだー、、、、、」
と呟き、そして即座に
「買います!」

そう言ってにっこり笑いました。お嫁入決定の瞬間でした。
自分の好きなものを、他の人に好きと言ってもらえるのは嬉しいものですし、喜んで貰えるのはもっと嬉しいですね。

※もう1枚の原画「Migratory Bird」はまだございますので、是非ご覧ください。荻原さんの原画を手にできる貴重なチャンスです!


Artistの皆さんのご厚意で、Artistsanにご参加いただき、心から感謝しております。
もっと力を付けて、皆さんの作品の販売に貢献できればと思っております。

そしてお客様の皆様にも、こんな駆け出しのサイトでお買い物をして頂いて、本当に有難く思っております。

今後とも、よろしくお願いいたします。















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