イラストレーター/金子大悟さんとの出会い
それはまだ、私が30年働いた前職を退職し少し経った昨年の10月くらいだったと思います。たまたま渋谷に用があったので、その帰りにふらっと行き付けのギャラリーコンシールに立ち寄った時のことです。
私はまっすぐにこのカフェスペースに向かい、
お店にはいつものようにこのギャラリーの責任者であり若い友人のMちゃんがいました。
「こんばんは」
私はそう言いながら入っていくと、彼女はいつもの様に素敵な笑顔です。
「こんばんは」
挨拶を交わしてカウンターで彼女にコーヒーを頼んで、彼女がコーヒーを入れてくれている間ふと視線を横に置いてあった棚に移すと、一枚のポストカードが目に飛び込んで来ました。
私は、思わずMちゃんに
「このイラストって誰が描いたの?」
そう聞いていました。
「それですか?!それは金子大悟さんというイラストレーターの方です。素敵ですよねー!」
そう教えてくれました。
ある意味、これがイラストレーター金子大悟さんとの出会いであったと思います。
後から、金子さんにお会いしてこの経緯を話しました。すると、この絵にはもう一枚彼女の側から描いた呼応するイラストがあると伺いました。
「なんて物語チックなのでしょう!」
後日そのイラストを見せて頂いたのがこのイラストです。
これを見ると、やはり別れの様ですね。愛はあるのに、、、
それは兎も角、その日以来このイラストを描いた人が気になって仕方なくなりました。
もっと見てみたい。
10月には、Artistsanの構想も少しづつ頭の中で整理されてきており、お願いするアーティストさんやブランドさんに少しづつコンタクトを取り始めていたころでもありました。
しかし、このイラスト描かれた金子さんとは全く面識もありませんし、これだけのイラストを描く方が、私の様なものの所に参加してくれるかどうか全く疑問であったため、話は私の心の中だけのモノになっていました。
それから2018年を迎え、Artistsanも3月のオープンを控え準備の大詰めに入って来ました。
あれからも金子さんの名前をググって、彼のサイトを覗いたりしていたのですが、やはり凄く素敵な作品が多く、テレビ番組の題字のデザインなんかもやってらっしゃることなんかも知りました。
「やはり高根の花か!?」
そんな風に思っていました。
しかしオープンをぎりぎりに控え、どうしても金子さんに参加してほしいという想いは強くなり、コンシールのMちゃんに繋いで貰おうと彼女に連絡を取ってお願いをして繋いで貰いました。そして金子さんに連絡を差し上げると、快く話を聞いて頂けることとなり、とうとうお会いすることとなりました。正月明け早々の事です。
場所は勿論ギャラリーコンシールで。
金子さんとの待ち合わせには少し早めに行き、彼の登場を待っていました。
彼は時間通りに現れました。時間に正確な方です。
金子さんは、30代半ばのとても知的な雰囲気を漂わせた方で、「とても感じの良い青年」というのが第一印象でした。
私は立ち上がって
「河野です。初めまして!」
「金子です。初めまして!」
「よろしくお願いします。」
私はそう言って握手を求めました。
「こちらこそ。」
握手を交わして、二人は古い合皮のソファーに向かい合って座りました。
私は、Artistsanの趣旨と出来上がっていたデモサイトを彼に見せながら、私の金子さんの作品との出会いや想いを割と一所懸命に説明をしました。
すると彼は、
「ありがとうございます。そんな風に言って貰って嬉しいです。是非参加させてください。」
と快諾してくれました。
それから金子さんんの顔の作品を何枚か見せて頂き、趣味のオーディオの話なんかをすると、意外なことに彼もオーディオファンという事が分かり、話は大いに盛り上がりました。
それ以来、私の違う仕事のご協力も頂くような間柄になり、現在に至ります。
実際にArtistsanをオープンさせアート作品を扱ってみますと、一応は心構えは出来ていたもののなか厳しい現実を突きつけられます。
私は、日本においてもヨーロッパの様にお気に入りの絵を見つけ、例えばお気に入りの服を見つけて買うような時代が、すぐそこに来ていると感じていましたし、今もそう思っています。
しかし、そこまで行くにはあと数年必要なのかもしれません。
「豊かさ」という言葉を思うときに、自分の好きを見つけて、誰に見せるでも自慢するでもない自分だけの喜びというのが根底にあります。
アイデンティティー、という言葉は世に溢れていますが、我々日本人を考えると、まだまだ横並びや、多くの人が評価するものが良いものという自分の目以外の他社視線を気にする文化が根強く残っているようです。
それでも情報は溢れ、メディアのの種類は増大し、様々な角度から物事が捉えられる世の中になってきているのも事実です。SNS等の登場で、外国との距離も物凄く縮まりました。
もしかしたら、自分だけの「好き」に意味を持つ時代はほんの少し先にあるのかも知れません。
各個人が、それぞれの価値観を持ち、それを語り合い、尊重する、そんな時代はもうすぐだと感じています。
絵も音楽も本も食器もファッションも、「豊かさ」という意味で個人の中で皆同じ価値観で語られるようになって行くと、とても面白いのではないかと心から思っています。
金子さんがArtistsanのために作り込んで下さった作品があります。
それがこちらです。 「HOUSE&MUSIC entrance」
ベッドに横たわった女性の奥には、男性が一人やはり窓辺に。そして我々がお互いに好きなオーディオセットが奥に置いてあります。遊び心満点ですね!
そして、違う場所から窓の外の風景を眺めています。
この二人の今後が気になります。
「HOUSE&MUSIC entrance」はグラフィックの作品で、何枚ものレイヤーを重ねて描かれた、金子さんの意欲作です。
その他にも、彼の原画を数点扱わせて頂いております。
こちらの作品は、数少ない金子さんのドローイング作品です。
モノトーンであっても金子さんのタッチとノスタルジーポップは健在です!
是非ごゆっくりサイト内をご覧ください。
あなたもあなただけの「好き」に出会うかも知れません。
渋谷のギャラリーコンシールは、渋谷の西口ロータリーの向かい側にある商店街の坂道を上り詰めた右側の古い雑居ビルの4階にあります。ギャラリーとカフェが併設されている面白いお店です。
学生時代私は、このビルの中にある雀荘によく通っていました。理由は1時間一人百円という安さ以外にはなかったのですが。
いや、それだけではなく、そこの焼きそばが美味しかったこともあったように思います。
当時、そのビルの2階にはOS劇場という所謂ストリップ小屋があり、少しというかとても怪しげなビルでありましたが、今はその面影を残すのはその雀荘だけとなり、リノベーションをされたとても文化の匂いのするビルになっています。それでも、私が学生であった40年近く前の、どういうか空気感や匂いの様なものが微かに残っているため、どこかとても居心地が良い訳です。
その日私は、4階までの少し暗い階段をいつもの様に息を少し上げながら上り、天井から下がっている透明の厚手のセルロイドの様な断熱暖簾を潜り、中に入って行きました。
中に入ると、壁は真っ白で床はアンティーク調のしっかりした太めのフローリング。
入って直ぐ左右に各々14畳くらいの広さのギャラリースペースがあり、そのギャラリースぺースの入り口は丁度一枚分の扉くらいの大きさで、それはまた丁度にじり戸を開けたようなの様な面持ちで、ギャラリースペースの明かりが少し暗い廊下をフワッと照らしていました。
そのまま進むと、左手に大きめのギャラリースペースがもう一つ、そして、右手はカフェスペースになっており、1960年代後半にに各家庭で流行った今ではアンティークとなった合皮の応接セットなんかが幾つか置いてある20畳くらいの広さのカフェスペースがあります。ギャラリーコンシールはそんな感じの場所です。
学生時代私は、このビルの中にある雀荘によく通っていました。理由は1時間一人百円という安さ以外にはなかったのですが。
いや、それだけではなく、そこの焼きそばが美味しかったこともあったように思います。
当時、そのビルの2階にはOS劇場という所謂ストリップ小屋があり、少しというかとても怪しげなビルでありましたが、今はその面影を残すのはその雀荘だけとなり、リノベーションをされたとても文化の匂いのするビルになっています。それでも、私が学生であった40年近く前の、どういうか空気感や匂いの様なものが微かに残っているため、どこかとても居心地が良い訳です。
その日私は、4階までの少し暗い階段をいつもの様に息を少し上げながら上り、天井から下がっている透明の厚手のセルロイドの様な断熱暖簾を潜り、中に入って行きました。
中に入ると、壁は真っ白で床はアンティーク調のしっかりした太めのフローリング。
入って直ぐ左右に各々14畳くらいの広さのギャラリースペースがあり、そのギャラリースぺースの入り口は丁度一枚分の扉くらいの大きさで、それはまた丁度にじり戸を開けたようなの様な面持ちで、ギャラリースペースの明かりが少し暗い廊下をフワッと照らしていました。
そのまま進むと、左手に大きめのギャラリースペースがもう一つ、そして、右手はカフェスペースになっており、1960年代後半にに各家庭で流行った今ではアンティークとなった合皮の応接セットなんかが幾つか置いてある20畳くらいの広さのカフェスペースがあります。ギャラリーコンシールはそんな感じの場所です。
私はまっすぐにこのカフェスペースに向かい、
お店にはいつものようにこのギャラリーの責任者であり若い友人のMちゃんがいました。
「こんばんは」
私はそう言いながら入っていくと、彼女はいつもの様に素敵な笑顔です。
「こんばんは」
挨拶を交わしてカウンターで彼女にコーヒーを頼んで、彼女がコーヒーを入れてくれている間ふと視線を横に置いてあった棚に移すと、一枚のポストカードが目に飛び込んで来ました。
私の目の焦点はスーッとそのポストカードに描かれていたイラストに引き付けられ、気付けば何だか意味も分からずそのイラストに釘付けになっていました。
それはまるで昆虫学者が、道端で希少甲虫を突然見つけたようなそんな感じであったかも知れません。
それはまるで昆虫学者が、道端で希少甲虫を突然見つけたようなそんな感じであったかも知れません。
「なんだーこのイラスト!」
一目見たその瞬間から、私はこの絵が大好きになっていました。
全て中間色を使いながらも、しっかりしたインパクトのある輪郭。
そして、何とも言えない哀愁が階段の向こうの大きな窓に向かっている男の子の背中に漂っています。角度から言って、それは多分3階くらいの窓辺に彼は居るのだと思われます。
そして、何とも言えない哀愁が階段の向こうの大きな窓に向かっている男の子の背中に漂っています。角度から言って、それは多分3階くらいの窓辺に彼は居るのだと思われます。
良く見ると窓の向こう側の道路にはバスが一台、その後ろに女の子が立って、男の子のほ方を見上げています。
彼と彼女の関係やその二人に何があったのだろう?
別れを告げた二人が、最後に目線を交わしているのか?
はたまた、ずっと分かれていた二人が数年ぶりに再会を果たした瞬間なのか?
それは、嬉しい再会なのか?それとも、、、、
そんな物語を勝手に頭の中で妄想してしまいました。
それにしても、見たことのない新しい表現方法でしたし、何故かとても懐かしい感じもしました。
矛盾したことを言いますが、そのイラストは複雑な想いとノスタルジーを感じさせる、それでいてとてもポップな「物語のある素敵なイラスト」だったのです。
その時のイラストがこのイラストです。
私は、思わずMちゃんに
「このイラストって誰が描いたの?」
そう聞いていました。
「それですか?!それは金子大悟さんというイラストレーターの方です。素敵ですよねー!」
そう教えてくれました。
ある意味、これがイラストレーター金子大悟さんとの出会いであったと思います。
後から、金子さんにお会いしてこの経緯を話しました。すると、この絵にはもう一枚彼女の側から描いた呼応するイラストがあると伺いました。
「なんて物語チックなのでしょう!」
後日そのイラストを見せて頂いたのがこのイラストです。
これを見ると、やはり別れの様ですね。愛はあるのに、、、
それは兎も角、その日以来このイラストを描いた人が気になって仕方なくなりました。
もっと見てみたい。
10月には、Artistsanの構想も少しづつ頭の中で整理されてきており、お願いするアーティストさんやブランドさんに少しづつコンタクトを取り始めていたころでもありました。
しかし、このイラスト描かれた金子さんとは全く面識もありませんし、これだけのイラストを描く方が、私の様なものの所に参加してくれるかどうか全く疑問であったため、話は私の心の中だけのモノになっていました。
それから2018年を迎え、Artistsanも3月のオープンを控え準備の大詰めに入って来ました。
あれからも金子さんの名前をググって、彼のサイトを覗いたりしていたのですが、やはり凄く素敵な作品が多く、テレビ番組の題字のデザインなんかもやってらっしゃることなんかも知りました。
「やはり高根の花か!?」
そんな風に思っていました。
しかしオープンをぎりぎりに控え、どうしても金子さんに参加してほしいという想いは強くなり、コンシールのMちゃんに繋いで貰おうと彼女に連絡を取ってお願いをして繋いで貰いました。そして金子さんに連絡を差し上げると、快く話を聞いて頂けることとなり、とうとうお会いすることとなりました。正月明け早々の事です。
場所は勿論ギャラリーコンシールで。
金子さんとの待ち合わせには少し早めに行き、彼の登場を待っていました。
彼は時間通りに現れました。時間に正確な方です。
金子さんは、30代半ばのとても知的な雰囲気を漂わせた方で、「とても感じの良い青年」というのが第一印象でした。
私は立ち上がって
「河野です。初めまして!」
「金子です。初めまして!」
「よろしくお願いします。」
私はそう言って握手を求めました。
「こちらこそ。」
握手を交わして、二人は古い合皮のソファーに向かい合って座りました。
私は、Artistsanの趣旨と出来上がっていたデモサイトを彼に見せながら、私の金子さんの作品との出会いや想いを割と一所懸命に説明をしました。
すると彼は、
「ありがとうございます。そんな風に言って貰って嬉しいです。是非参加させてください。」
と快諾してくれました。
それから金子さんんの顔の作品を何枚か見せて頂き、趣味のオーディオの話なんかをすると、意外なことに彼もオーディオファンという事が分かり、話は大いに盛り上がりました。
それ以来、私の違う仕事のご協力も頂くような間柄になり、現在に至ります。
実際にArtistsanをオープンさせアート作品を扱ってみますと、一応は心構えは出来ていたもののなか厳しい現実を突きつけられます。
私は、日本においてもヨーロッパの様にお気に入りの絵を見つけ、例えばお気に入りの服を見つけて買うような時代が、すぐそこに来ていると感じていましたし、今もそう思っています。
しかし、そこまで行くにはあと数年必要なのかもしれません。
「豊かさ」という言葉を思うときに、自分の好きを見つけて、誰に見せるでも自慢するでもない自分だけの喜びというのが根底にあります。
アイデンティティー、という言葉は世に溢れていますが、我々日本人を考えると、まだまだ横並びや、多くの人が評価するものが良いものという自分の目以外の他社視線を気にする文化が根強く残っているようです。
それでも情報は溢れ、メディアのの種類は増大し、様々な角度から物事が捉えられる世の中になってきているのも事実です。SNS等の登場で、外国との距離も物凄く縮まりました。
もしかしたら、自分だけの「好き」に意味を持つ時代はほんの少し先にあるのかも知れません。
各個人が、それぞれの価値観を持ち、それを語り合い、尊重する、そんな時代はもうすぐだと感じています。
絵も音楽も本も食器もファッションも、「豊かさ」という意味で個人の中で皆同じ価値観で語られるようになって行くと、とても面白いのではないかと心から思っています。
金子さんがArtistsanのために作り込んで下さった作品があります。
それがこちらです。 「HOUSE&MUSIC entrance」
ベッドに横たわった女性の奥には、男性が一人やはり窓辺に。そして我々がお互いに好きなオーディオセットが奥に置いてあります。遊び心満点ですね!
そして、違う場所から窓の外の風景を眺めています。
この二人の今後が気になります。
「HOUSE&MUSIC entrance」はグラフィックの作品で、何枚ものレイヤーを重ねて描かれた、金子さんの意欲作です。
その他にも、彼の原画を数点扱わせて頂いております。
ギター弾き |
フーディーの男 |
こちらの作品は、数少ない金子さんのドローイング作品です。
モノトーンであっても金子さんのタッチとノスタルジーポップは健在です!
是非ごゆっくりサイト内をご覧ください。
あなたもあなただけの「好き」に出会うかも知れません。
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