ひと休憩 ~少しオーディオの話3~「良い音のある生活」

marantzのお手軽なネットワークCDレシーバーMCR-603とイギリスのスピーカーメーカーB&W CM1のお陰で、我が家にひとランク上の音がやって来ました。以前の入門機種は音楽から離れていた私に、再び好きなものを思い起こさせてくれ、今回のものが音楽や音の世界への入り口を開いてくれた様な感じです。

ネットワークCDレシーバーとは、CDプレーヤー・チューナー・インターネットラジオ受信・PC音源をエアーで飛ばし再生・USBiPhoneミュージックプレーヤーを再生、こんな機能が詰まったものです。これが大変便利なオーディオ機器なのです。
難しそうなことを書いているようですが、扱いはとても簡単です。そして、バイアンプ対応と書きましたが、これはスピーカーに繋ぐ端子が全部で4つあるもので、2wayスピーカーのツイーター(高音)とウーハー(低音)部分を別々につなげるのです。MCR-603は、小さな体に二つのアンプを持っているという事です。

大体、スピーカーに4つの端子が付いていること自体、全く知りませんでしたので、全てが新しい知識で驚くばかりでした。オーディオファンの方が見たら、吹いてしまいそうな内容ですが、当時の私には相当な刺激でした。

私は現在58歳ですが、私たちの高校時代には大半の男子がオーディオに憧れ、お小遣いやお年玉をためて、ステレオセットを買ったものです。当時、CDなどは勿論ありませんでしたので、レコードプレーヤー・アンプ・チューナー・テープデッキ・スピーカーなどを揃え、自分の部屋で好きなレコードを聴く。これに憧れていた訳です。

レコードは当時2500円でした。ひと月のお小遣いが5000円くらいでしたので、そう何枚も買える訳ではありません。レンタルレコード屋さんなんてまだ当時ありませんでしたので、これまたお小遣いとお年玉を貯めて買うしかなかった訳です。ですので、持っているレコードを文字道理擦り切れるまで聴きました。「バチ・バチ」というレコードのキズの音がドンドン増えて行く訳です。まあ、今となってはそれも懐かしい想い出です。

2500円の日本版を買うことがなかなか難しかったので、輸入レコードを買う機会が増えました。輸入レコードは渋谷に買いに行きました。CISCO(宇田川町)・Honckytonk(宮益坂)・DISK UNION(公園通り)、特に前者2つの店に通いました。理由はただ安かったからということと、外国でリリースされたものが割と早めに入って来るということでした。LP1枚¥1600前後だったと記憶しています。Linda RonstadtJakson BrownなどのAsylumレーベルのファンでした。

どの店もそういうことに詳しいF君に連れて行って貰い行くようになったものです。
当時の渋谷は、今から思うと学生にとってとても居心地の良い安全な町でした。当時はまだセンター街はタイルではなく普通のアスファルト、109はまだなく緑やという地方百貨店がそこにありました。最上階はボーリング場で、ピンボールマシーンが10台くらい並んでいる、そんな百貨店でした。そこにもピンポールマシーンをやりに良く行きました。
勿論その後出てくるチーマーみたいなものも、当時はまだ影すらありませんでしたし、スクランブル交差点に人が溢れていることなんかもありませんでした。兎に角、良い思い出が詰まった街です。

そして私も、中学から高校にかけてはご多分に漏れずバンドをやっておりました。たいして弾けないピアノとヴォーカルが担当で、当時流行っていましたニューミュージックのコピーをメインにやっておりました。そして当時「バンドで食えたら!?」なんて思っておりました。
お恥ずかしい限りですが(笑)その後、山下達郎という天才の出現で音楽への夢はあっさりとと途絶え、聴く側に回りました。そして、アメリカ音楽が少しづつ変遷期を迎えており、好きだったウェストコースト音楽も形を変えて行ったことも手伝って、達郎以外を聴くことがなくなっていきました。

そんなこんなで、我々世代の男子はかなりの確率でステレオに憧れていた訳です。
因みに、私と同世代の作家、奥田英朗さんが書いています短編集「家日和」の中にある「家へおいでよ」というとても面白い短編があります。これを読んで頂けると、当時の男子のオーディオ感がお分かり頂けるかも知れません。(奥田英朗さんは、抜群に面白い作家さんです。)
12万ほどで購入したオーディオ入門セットは、私に音の楽しさを教えてくれました。良く聞く言葉ですが、
「今まで聞こえなかった音が聞こえてきた!」
当にそうなのです。今までのステレオでは聞こえなかった音が聞こえてくるのです。ずっとレコードやCDで聴きなれた筈の曲にこんな音が!こんな響きが!毎日楽しくて仕方ありませんでした。

そうして、ジャズを中心にCDを探す毎日になりました。ある日、新宿のタワーレコードのジャズコーナーの一角にピアノトリオを中心とする小さな一角と出合いました。そこの小さなコーナーにはとても魅力的な言葉でお勧めCDが紹介されているのです。その何枚かを視聴してみましたら、買わずにはいられなくなり、まず1枚。

そして、そこに通う様になり、新しい紹介CDを視聴し購入するのが一つの楽しみになりました。その頃、同時に新宿にビックロができて、そのオーディオコーナーに通う様になるのです。
ビックロにはD&Mの派遣販売員のMさんという方がいらっしゃり、本当に色々なことを教えて頂きました。

暫くは購入した満足感でいっぱいでしたが、そのうちに新しいセットの音にも疑問が出てきました。どうしても低音が膨らむのです。量感はあるのですがどうも切れが悪いのです。これに対してどう対応すべきか、どうしたらこの膨らみを抑えられるのか、ネットで調べまくり、Mさんにアドバイスを仰ぎ、色々とチャレンジしました。先ずはスピーカーケーブルをあれこれ試しました。変な話ですが、このスピーカーケーブルで音は本当に変わるのです。スピーカーケーブルも泥沼のように種類と価格があり1m何百円から何万もするものまでありますが、これは少し?が付きます。ちょっとオカルト的ですよね。

私は、高くても2000円くらいのモノしか買いません。あれこれ試すうちに、それだけではなくやはり配置も含めたセッティングの方法が重要だと気付き、壁からの距離、角度そしてインシュレーター(スピーカーの下に置く振動抑制をするもの)の相性などなど、実に奥が深いのです。オーディオは、ある意味振動との戦いなのです。あとは電源タップなんかも。
お金がありませんので、手の届くオカルト値段ではないものを少しづつ揃えて行きました。

~つづく~

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