高尾綵舟さんとの出会い

4年ほど前、お取引先の工場の社長であるとても親しくさせて頂いているKさんが、
「ジャズ歌手がやっている店が渋谷にあるのですが、河野さん行きませんか?」
そうお誘いを受けて、ジャズ好きの私としては
「是非!」
という事で、道玄坂を上り終えた左手の雑居ビルの4階にある「Aterier Rojoart」という店に連れて行って頂きました。

そこは、Remahというヴォーカリストの女性がやっている少し変わったお店で、昼はアメリカの古着を販売し、夜はパブタイム的に人が集まるような店でした。
パブというのでもなく、サロンという感じのとても変わったお店なのです。
白い扉を開けるとすぐに小さなカウンターがあり、右手は15畳ほどのスペースがあり、正面には割と高い位置に洋服ワンピースを中心にズラッと古着の洋服が掛けてありました。
その洋服の奥には大きな一面の窓があり、道玄坂の並木の緑が見えるのです。
アップライトピアノ、JBLの小さなスピーカーとかなり上等なオーディオ機材、左右両壁際には大きなソファーと小さめのソファーが対面するように二つ向かい合って置かれていて、それぞれのソファーの前には低いスツールが一台づつ。右手の大きなソファーの壁は木板で化粧をしており、そこにはこれまた大きな犬の絵が飾られていました。

入ってすぐに無類の音楽好きの私は、Remahと意気投合し、あっという間に昔からの知り合いのような関係性になっていました。お互いジャズが好きで彼女は歌い手です。特にロバートグラスパーのファンだというと彼女はグラスパーの友人だという事で、これまた話は盛り上がった訳です。
その後、私はその店で沢山の友人が出来ることになります。そして、グラスパー来日の際に、会わせてもらう事にも。

道玄坂を上り切るのは多少面倒でしたが、気取らない居心地の良い店でしたので、私は月に34回は行くようになりました。
一人で行っても、そこにはとてもユニークな人たちが集まるので飽きることはありません。
店の造りも、向かい合ったソファーのおかげで、なんだかんだ話をする様になるのです。

それこそ音楽の話から、アートの話、環境デザインの話、政治の話、日常で起こった面白い話などの四方山話を良い歳をした大人たちがフランクに話し合える、そんな店だったのです。
その店では、私の考えることや視点なんかが驚くほどスムーズに受け入れて頂き、そこに集まる人たちの話も本当に自然に受け入れられました。

私が、この歳で独立を決意した一番のきっかけの場所でもあります。

そんな「Aterier Rojoart」で出会った中の一人が高尾綵舟さんでありました。
彼女は、背が高く何となく話しかけるのに気後れするタイプでしたので、仲良くなるまでに1年ほどかかったと思います。皆の間ではAguちゃんで通っています。

仲良くなり、色々話をしているうちに彼女が書家である事が分かり、彼女の字をスマホで見せて貰ったりする様になりました。
初めて彼女の書をスマホで見た時に、勿論スラっと背が高くモダンな彼女と「書」というギャップもありましたが、あまりに優しさの溢れる美しい字だったので、とても驚いたのを覚えています。



そんな彼女のエピソードを一つだけご紹介したいと思います。
私は、Remahのライブのチケットのまとめをやっていたりもしています。(これは友人という立場の域を超えるものではありませんが)
彼女のライブは当時自主運営でしたので、協力していた訳です。
SNSのグループメールを利用して十数人の手配が終わりホッとしいたところ、一人急用ができたとのことでドタキャンが出てしまいまいした。
ドタキャンされた方も大変恐縮しており、
「突然で申し訳ないです!何とかなりますか?」
そこで私はその穴を埋めるべくグループメールで呼びかけていたところ高尾さんから
「そのチケット私に譲ってください!良かったです、私もう一人チケットが手に入れたくて困っていたので助かりました!」
そんなメールがグループに上がって来ました。
ドタキャンされた方も、そんな言い方で言ってもらえるととても救われるでしょうし、私もこの気遣いにとても救われた訳です。


ものの言い方一つですが、なかなか出来る気遣いではありません。彼女の素晴らしい気遣いの一つです。
会話を交わすようになってから、Facebook等で彼女の字を見るようになり、Remahを中心とする、ライブや飲み会で話をするにつけ、立ち振る舞いや何気ない気遣いの素晴らしさにも気付き、彼女の「書」と高尾綵舟という人物が、私の中でとても自然に融合していきました。
私は、Artistsanを立ち上げるに至って彼女に是非参加してほしい!と伝え彼女も一発でOKしてくれました。
「書」というものが、どうビジネスになるのかは中々のハードルだと思います。しかし、私は彼女の中から湧き出す「とても優しく清々しい書」を多くの人に見てもらいたくて仕方なくなりました。私自身が彼女の書を見ていると、とても心が和みそして心洗われる実感があるのです。


そして時代は2020年の東京オリンピックを迎えるアプローチの時間となって来ました。
日本人として、もう一度日本ならではの良さに目が行く雰囲気が徐々に高まってきておりますし、インバウンドの需要も確実に増えて行きます。そんな中、昔からそうでありましたが、「書」も絵やイラストのように鑑賞するものであっておかしくないと思うのです。
皆さんも彼女の「書」を、絵を眺めるような気持ちでじっくり観てください。きっと心にそっとそして確かに伝わる何かがある筈です。
高尾綵舟さんに何かご用命がございましたら、ご遠慮なくArtistsanのコンタクトフォームよりご連絡ください。お待ちしております。






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